さて、まず記念すべき1記事目でご紹介させていただくのは、1981年に発表されて以降、根強い人気を誇る和製スペースオペラ『銀河英雄伝説』をご紹介させて頂きます。
銀河英雄伝説とは
『銀河英雄伝説』とは小説家田中芳樹氏が1981年に発表された、遠未来の銀河系に進出した人類の抗争を描いたSF小説です。
本伝にあたる第1巻『黎明篇』は翌82年刊行され、1987年に最終巻にあたる第10巻の『落日篇』が刊行されました。

その他にも外伝が全5巻が刊行、未収録の短編を集めた電子版の外伝5巻も含め、全15巻が発売され、累計1500万部以上、版にして100刷以上が世に送り出されています。
発表30年以降、形を変えて刊行され続けている名作
本作は、1982年から1987年に掛けて、新書版として徳間書店から刊行されました。
その後、各巻の2巻分を1冊に合冊された、ハードカバータイプの『愛蔵版』が1992年と98年に発売されています。

その後、徳間書店の新ブランド『徳間デュアル文庫』の創設の際に、各巻を上下巻に分冊した、文庫版が2000年から2002年にかけて発売されました。

文庫化に伴い、マンガ版の執筆を手掛けた道原かつみ氏がカバーイラストや挿絵を手掛けられています。
そして、徳間デュアル文庫の刊行数減少に伴い、出版社を東京創元社へ移し、2007年から創元SF文庫として刊行されました。


2018年の再アニメ化に伴い、アニメ制作会社の関連である『マックガーデンノベルス』から2018年以降刊行され続けています。
なんと、出版社は3社、発売形態は5種類という多様な形で、発表以来40年近くに渡って出版され続けています。
アニメ、ゲーム、マンガなど多方面でメディアミックスに成功
30年近く前に完結した物語ですが、様々なジャンルで関連作品が産み出されているのも、この作品の特徴です。
アニメ 銀河英雄伝説
アニメ版は原作完結後の1988年から2000年にかけて、本伝全110話、外伝全52話がOVA版にてリリースされています。
現在、OVA版はブルーレイディスクと、インターネット動画配信などで楽しむ事が出来ます。
ブルーレイディスクは全4巻構成です。
動画配信サービスでは、NTTdocomoが提供する『dアニメストア』で全152話をお楽しみ頂けます。
そして、2018年に『21世紀版』と銘打って、キャストと製作陣を一新し『銀河英雄伝説 Die Neue These』として、テレビアニメにて地上波放送されました。
1988年のOVA版は、原作の外伝2巻を除き、全てアニメ化がされています。初期の本伝第一期では、やや作風に試行錯誤がされていますが、原作を忠実に再現しています。
現代アニメと比べたらやや古臭い絵柄ですが、セルアニメらしく躍動感のある戦闘シーンが描かれています。
それに対して、2018年度版は現代CGアニメらしく、繊細で美しい映像で作られています。しかし、総勢600名に及ぶ登場人物達のキャラクターの描き分けが、OVA版と比べると分かりづらく感じます。
どちらも見ごたえのある作品となっていますので、ご興味のある方は是非手に取って下さい。
マンガ 銀河英雄伝説
マンガは、道原かつみ氏が手掛ける通称『道原版』と、『封神演技』などでお馴染みの藤崎竜氏が手掛ける『藤崎版』が2種類存在します。
道原かつみ氏の手による道原版は、連載誌が変更されるなど紆余曲折もあり、原作の途中でマンガは完結しています。
藤崎版は2016年の開始以降、現在好評連載中です。
アニメ、マンガ以外でも、ゲーム、舞台など様々な媒体に多方面で商業展開され、成功を収めています。
原作者 田中芳樹とは
原作者の田中芳樹氏は、この銀河英雄伝説が初の長編作品となっています。
小説雑誌『幻影城』で新人賞を獲得後、短編小説を経て初の長編にあたる本作を発表しました。
その後、架空の大陸を舞台とした『アルスラーン戦記』『マヴァール年代記』や、現代に転生した竜王達の活躍を描く伝奇小説『創竜伝』などヒット作を生み出しました。

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また、過去の中国を舞台とした歴史小説を多数執筆しており、現在は少年向けのジュナイブル小説なども手掛けています。

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壮大な宇宙を舞台にしたスペースペラ 銀河英雄伝説の魅力
刊行から30年以上立ってなお、現在も作品が産み出されている『銀河英雄伝説』の魅力とは一体なんなのでしょうか?
まだ見ぬ未来の歴史を描く歴史小説
まず本作の特徴として挙げられるのが、『架空の遠未来を舞台とした歴史小説』の態をとっている事です。
大河ドラマの人気しかり、戦国時代を題材にしたゲームしかり、過去の人物達が織り成す歴史ドラマは、後世の人々を魅了します。
本作では、架空の歴史ながら人類が外宇宙に進出した後の歴史が丹念に描かれており、後世の人々が読む歴史小説の体裁が取られています。
まるで三国志や水滸伝のような英雄譚と群像劇を、見たこともない銀河系を舞台にして読む事が出来ます。
スターウォーズと三国志のいいとこ取り、というのが本作の魅力の1つです。
総勢600名以上に及ぶ多彩なキャラクター
また、銀河系の興亡史が描かれるにあたり、登場キャラクターがなんと総勢600名以上。
その一人ひとりの人物の背景が丹念に描かれ、行動原理を明確にする事により、物語に厚みと彩りを与えています。
キャラクターごとの人気、不人気はありますが、子供の頃に読んだ時には理解しがたい人物も、大人になってみれば非常に分かる、そんな人間味溢れる人々が織り成す群像劇となっています。
ちなみに私が好きなのは、月並みですが『不敗の魔術師』ことヤン・ウェンリーです。
©田中芳樹/徳間書店/徳間ジャパンコミュニケーションズ/らいとすたっふ/サントリー
銀河英雄伝説本伝 『バーミリオンの死闘 前編』より出典
矛盾を抱え、自らの行動に疑問に思いながらも、自身の信念を貫く彼の姿は、妥協と後悔に満ちた人生(苦笑)の中で、行く道に掲げる一燈ともいえる存在です。
清廉な専制国家 VS 腐敗した民主主義国家
舞台となる銀河系に割拠する三つの国家、
銀河帝国
自由惑星同目
フェザーン
には、明確かつ興味深いイデオロギーが与えられています。
銀河帝国:民主主義の腐敗の果てに成立した専制国家の末期
元々、銀河系に進出した人類には、『銀河連邦』という人類による単一民主主義国家が存在していました。しかし、多くの人々の意見を聞き入れる『民主主義』と、一つの制度のもと運営される『単一国家』は当初から矛盾を抱えていました。
そこに颯爽と登場した『ルドルフ』という男が、ドラスティックな改革によって多くの熱狂的支持を集め、銀河連邦の権力を自身に集中させます。結果として、ルドルフは銀河連邦の終焉と自らを皇帝と称する宣言を行います。
多くの弾圧によって民主主義は抹殺され、銀河はルドルフとその子孫が支配する封建社会へと逆戻りしたのです。
自由惑星同盟:創始者の決死行によって築かれ、時代と共に腐敗した民主主義国家
銀河帝国の専制主義に反発した人々は弾圧を受けました。その中の一人ハイネセンという青年が、自らの理想を掲げ一部の人々と共に銀河帝国から脱走します。
後に『長征1万光年』と呼ばれる脱出行の果てに、帝国の目の届かない恒星系を発見し、そこに民主主義国家を樹立したのが『自由惑星同盟』です。
帝国に発見されない内に国力を整え、帝国に発見された後は銀河系を二分する勢力として、帝国と慢性的な戦争状態に陥ります。
その間に、清廉な思想の元に打ち立てられた民主主義は堕落し、政治を商売としか考えていない政治屋と、戦争を理由に台頭した軍部によって政治が壟断される末期症状に陥っていました。
フェザーン:商売人の打ちたて独立国家に塗装された歴史の暗部
銀河帝国は自由惑星同盟を『反乱軍』として扱い、国家として認めませんでした。
また、自由惑星同盟も帝国を『民主主義の敵』と認知しており、存在を認めていません。
しかし、広大な宇宙空間が緩衝材となって互いの国家を打倒するには至らず、二国家は慢性的な戦争状態に陥りました。
そこで、台頭したのが帝国内に打ち立てられた『フェザーン自治領』です。
互いの存在を認める事が出来ない両国の中間に立ち、物資や人の交流を仲介する『自治領』を初代自治領主が帝国内に築いたのです。
フェザーンでは商業主義が尊ばれ、『金儲けのためなら親でも売る』という重商主義と独立不羈の商人思想が幅を聞かせています。
しかし、その裏にはある惑星の思惑が隠されているのです。
というように、イデオロギーの異なる3国家が銀河系に鼎立しています。
この三国家の興亡が、物語の主軸におかれ、主人公である『玉座の革命児』ラインハルトの活躍が描かれています。
銀河英雄伝説を楽しむためには
現在、銀河英雄伝説は『マッグガーデンノベルズ』にて、2018年より刊行中です。
本伝10巻は刊行しており、外伝5巻の刊行が待たれています。

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また藤崎竜氏による、マンガ版『銀河英雄伝説』も、連載中です。

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活字は苦手、と言う方はこちらのマンガ版をお勧めします。
単純に原作を再現しているだけでなく、登場人物の心理描写や原作とは異なる人物から視点を変えた描写も行われていますので、原作小説を読み込んだ方にもお勧めです。
そして、アニメで『銀河英雄伝説』をご覧になりたい方は、NTTdocomoが提供する『dアニメストア』で全152話をお楽しみ頂けます。
こちらは、従来のOVA版全話と、2018年度版の新作もどちらも提供されていますので、お好みで選べるのがお勧めの理由です。
新作アニメの方は、2019年に三部作が劇場公開予定ですので、映画を見る前に、再度復習をするのにもお勧めです。
最後に 銀河の歴史を掌に
以上、30年以上にわたりロングヒットを誇るスペースオペラ『銀河英雄伝説』の魅力と楽しみ方をご紹介していきましたが、いかがだったでしょうか?
今後も銀河英雄伝説を詳しく取り上げていきますので、ご興味のある方は是非ご覧になってください。
それでは、最後までお読み頂き、まことにありがとうございました。
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